解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午後:第30問

ランベルト・ベールの法則が成立する吸光度測定で正しいのはどれか。2つ選べ。

a: 吸光度は透過率に比例する。

b: 吸光度は光路長に反比例する。

c: 吸光度は-1~1の範囲の値で表す。

d: モル吸光係数は物質によって異なる。

e: 透過光の強度は光路長に対して指数関数的に減少する。

分光光度計は、さまざまな波長の混合である光を単色光に分けてサンプルに照射することで、波長ごとの透過や反射を測定する装置である。これらの値をグラフで表したものは「スペクトル」と呼ばれ、物質はその種類や状態によって固有のスペクトルを示しす。これを利用し、分光光度計は物質の同定や分子構造の解析など、さまざまな解析用途に用いられている。また、ランバート・ベールの法則を用いて、サンプル溶液の濃度を定量することも可能である。ランバート・ベールの法則とは「ある物質を光が通過するとき、吸光度は物質の濃度と吸収層の厚さに比例する」という法則である。この関係を表した式に、サンプルの吸光度を当てはめることで、その濃度を求めることができる。
(分光光度計に関する基本用語)
透過率:サンプルに入射した光のうち、どれくらい光が透過するかを表した数値。膜厚や色などの測定に用いられる。
    透過率(T)=透過光強度(I)/ 入射光強度(I0
    パーセント透過率(%T)= I / I0 ×100
吸光度:特定の波長の光が物質を通過したときにどれくらい光が吸収されるかを表す値。光学密度(Optical density:OD)と呼ばれること   もある。濃度や含有量、濁度などの定量分析に用いられる。吸光度は以下の式によって、透過率から求めることができる。したがって、透過率100%のとき吸光度は0、透過率10%のとき吸光度は1、透過率100%なら吸光度は0となる。
    吸光度(A)= log10(1/T)= log10(I0 / I)
    吸光度(A)= 2-log10(%T)= 2-log10(I / I0 ×100)
反射率:サンプルに入射した光のうち、どれくらい光が反射するかを表した数値。膜厚や色などの測定に用いられる。以下式で表される。
    反射率(R)=反射光強度(I)/ 入射光強度(I0
    パーセント反射率(%R)= I / I0 ×100
ランバート・ベールの法則:吸光度は溶液の「濃度」と「厚さ」に比例するという法則で、以下式で表される。
    吸光度(A)=εcL
    [ ε:モル吸光係数(L・mol-1・cm-1) c:モル濃度 (mol・L-1) L:厚さ、光路長(cm)]
実際の測定では光路長は一定である。また、モル吸光係数は物質固有の定数なので、モル吸光係数が既知であれば、吸光度を測定することで、以下の式から溶液の濃度を求めることができる。
    c = εL / A
スペクトル:波長ごとの光の強度を測定してグラフ化したものをスペクトルと言う。たとえば、ある光の強度を波長ごとに示したものは「分光スペクトル」。波長ごとの透過や吸収、反射の強度を示したものは「吸収スペクトル」「透過スペクトル」「反射スペクトル」と呼ばれる。また、物質はその種類や状態によって固有のスペクトルを示す。したがって、スペクトルを調べることで未知のサンプルの同定や分子構造の解析を行うことも可能である。

a:吸光度(A)= log10(1/T)の式より、吸光度は透過率は比例しない。

b:吸光度(A)=εcLの式より、吸光度はL:厚さ、光路長に比例する。

c:透過率100%のとき吸光度は0、透過率10%のとき吸光度は1、透過率100%なら吸光度は0となる。よって、0~1である。

d:正解。モル吸光係数は物質固有の定数なので、モル吸光係数が既知であれば、吸光度を測定することができる。

e:正解。吸光度(A)=εcl= log10(1/T)= log10(I0 / I)より、指数関数的に減少する。

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臨床工学技士 国家試験 過去問
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